
「株価が割安かどうか調べたい」
というあなたにオススメの記事です。
PER,PBRなど割安度をはかる指標はいくつかありますが、「適正株価を出して今の株価と比べる」方法をご紹介します。
ご紹介するのは億越え投資家「ろくすけさん」の方法。
日経マネーのコラムで連載されている内容です。
この方法は機関投資家が使う「DCF法」に、ろくすけさんのアレンジを加えたものです。

簡単に言うと「その企業が永続的に利益を稼ぎ続けるとしたら現在の事業価値はいくらか?」を計算し理論株価を導く方法です。
※DCF法の理屈や詳細については日経マネーをご参照ください。
fa-external-linkろくすけさんの勝てる株式投資入門(15)


この記事は「難しい言葉がわからなくても算出できること」を目標に書いてます。
そして計算は意外と単純です。
最後には理論株価を自動算出するエクセルシートも貼り付けてありますので、読んでいただければ幸いです。
※とにかく計算できることを目標にしているため、DCF法の詳しい解説は省略しています。
あらかじめご容赦ください。
目次
理論株価の算出流れ
- 理論PERを出す
- 5年後時点の理論時価総額を出す
- 理論時価総額を現在価値になおす
- 理論株価を出す

手順1、理論PERを求める
まず、利益の安定性と成長性に照らして妥当なPER=「理論PER」を求めます。
「期待収益率」と「永久成長率」により理論PERを算出できます。
たとえば「期待収益率=6%」「永久成長率=1%」の場合、理論PERは「20」になります。
期待収益率の設定方法
期待リターン(利回り)のこと。ハイリスクな企業ほど高くなります。
投資リスクが高いとリターンも多くないと割に合わないですよね。
なのでハイリスクな企業は期待収益率が高くなります。
設定のポイント
・業績のぶれが大きい企業は7%超、小さい企業は7%以下にする
fa-exclamation-circle次の計算式でも算出できます(推奨)
期待収益率=
ベータ値×(マーケット期待収益率ーリスクフリーレート)+リスクフリーレート
リスクなしで得られる利回りのこと。(普通預金や国債など)
fa-tagsマーケット期待収益率
そのマーケットにおける期待リターンのこと。
日本株式の場合、約6%前後。銀行やGPIF(年金機構)が値を公表している。
fa-tagsベータ値
株価指数に対する各銘柄の感応度。
たとえばベータ値が1の場合、日経平均株価が1%動いたら個別銘柄の株価が1%動く。
永久成長率の設定方法
毎年のキャッシュフロー増加率の予測値。
投資家の主観で決める。
ここは重要ポイントです。正解がないので投資家の判断に委ねられます。
1%違うだけで後に算出される理論株価は結構変わります。
ろくすけさんは「アバント」というIT系の成長企業を例に出されてましたが、4%と高めに設定されていました。
・0~5%の範囲で設定する
・利益の伸びが大きい企業は高く、小さい企業は低くする
一般的にはインフレ率やGDP成長率を参考に、保守的(0~1%)に設定されることが多い。
手順2、5年後時点の理論時価総額を算出する
以下の式で算出します。
- 過去の利益増加率や企業の中期経営計画の目標値をもとに、5年目の当期純利益の予想値を求めます。
- 永久成長率を使って「6年目の当期純利益の予想値」を算出します。
- 6年目の当期純利益の予想値に理論PERをかけます。
この手順では企業が10年後も100年後も永続的に稼ぐとしたらいくらになるのか?を算出しています。

ここで間違えてはいけないのが、「6年目」の当期純利益を使って「5年後」時点の理論時価総額を出す点です。

と思うかと思いますが、本格的に説明するとめちゃくちゃ長くなるので今回は「そういうもんだ」でご容赦ください。
※この理屈を詳しく知りたい方は↓公認会計士「ひねけん」さんの動画ご参照ください。
とても分かりやすく私も大変お世話になりました。
ということで、文字だけじゃわかりにくいですよね。
のちほど例題を出して実際に計算してみますのでご安心ください。
手順3、5年後時点の理論時価総額を現在価値になおす
5年後の時価総額を設定した期待収益率で5回割ります。
そうすると現在価値に換算された「理論時価総額」を求めることができます。
手順4、目標株価(理論株価)を求める
最後、目標株価の算出です。
理論時価総額を発行済み株数で割ります。
そうすると1株あたりの目標株価が出ます。
目標株価と足元の株価を見比べることで、現時点で株価が割安かどうかを判断できます。

実例で計算してみる(セブン&アイHD)
みなさんご存じ「セブン&アイHD」を見てみます。

セブン&アイ中計より引用
計画目標値で「フリーキャッシュフロー=4000億」が公表されてるので今回はこれを使います。
本来はフリーキャッシュフローで計算するのが望ましいのですが、示されてない場合が多いのでその時は「当期純利益」を使ってください。
①期待収益率の計算

GPIF公式資料より引用
■前提条件
ベータ値: 0.59(ロイターより)
マーケット収益率: 5.6%(GPIF資料より)
リスクフリーレート: 0%(10年日本国債利回り)
期待収益率=
「ベータ値×(マーケット期待収益率ーリスクフリーレート)+リスクフリーレート」 なので
0.59×(5.6%ー0%)+0%
=3.3% となります。

②理論PERを計算
期待収益率: 3.3%
永久成長率: 0%
として理論PERを計算します。
理論PER=1÷(期待収益率ー永久成長率)なので
1÷(3.3%ー0%)
=30倍 となります。
同業のローソンが41倍、セブン&アイの予想PERが23倍なので、許容範囲とします。
③6年目のFCF算出
永久成長率0%にしてるので、5年目のFCF(=4000億)をそのまま使います。
(もし1%の場合は1.01をかける)
6年目のFCF=4000億とします。
④5年後時点の理論時価総額
6年目のFCF=4000億に理論PERをかけます。
4000億(6年目FCF)×30(理論PER)
=120,000億
これが5年後の時点の理論時価総額になります。
⑤現在価値になおす
5年後の理論時価総額を現在価値になおします。
期待収益率で5回割りましょう。
120,000億÷(1+3.3%)^5
=102,018億
これがセブン&アイの理論的に求めた現在価値です。
⑥目標株価を計算
現在価値になおした時価総額を発行済み株式数で割ります。
102,018億÷8.8億株
=1株あたり11,592円
2021年9月7日現在の株価=5,069円
ということで、今の株価はかなり割安だと判断できます。
⑦考察
割安という結果は、個人的に納得です。
■理由
国内市場は飽和してるが、海外での成長余地が大きい。
日本でコンビニが無い世界は考えられない。
都心から地方まで、子供からお年寄りまでみんな使う。簡単に衰退しない。
圧倒的な知名度(ブランド)と全国展開を実現。コスト競争力もあり参入障壁が高い(新たなコンビニ企業は生まれにくい)
利益率の良い銀行業(ATM)を行っており、利便性も良く重宝されている。
■海外展開
最近だとアメリカSpeedway社(アメリカのコンビニ)の買収があり、海外展開&買収も積極的です。
アメリカのコンビニ業界はマーケットの半分以上を中小企業が占めています。
再編が進んでいないので、セブン&アイが買収&統合をすることで成長が期待できます。
※今回は永久成長率=0%と保守的に見積もってますので、実際はさらに割安だと考えることができます。
この方法のメリット・デメリット
メリット: 企業の成長性を反映できる
デメリット: 投資家の主観的な要素が入る
大きいデメリットとしては永久成長率のように「投資家の主観的な要素」があり、絶対的な正解がないことです。
さきほどの割安診断も、投資家によっては「違う」という人もいると思います。

まとめ
いかがでしょうか。
大学で経済学部を専攻してた方は聞いたことがある内容かと思いますが、かなり専門的で難しい話です。
私も最初は意味不明すぎて理解するのに2週間かかりました。
しかしDCF法は投資業界、M&A、不動産業界では基本的な考え方であり、特に著名投資家、機関投資家も使ってる方法です。
信頼できる手法であり学ぶ価値はあると思います。
最後に、ここまで読んでくださった方へのプレゼントです。
理論株価が自動で計算できるエクセルです。
私も日々勉強中ですので至らない点があった場合は申し訳ありません。
みなさんの株式投資のお役に立てれば幸いです。
お読みいただきありがとうございました。
